根津では、まだ咲く前の色がいちばん静かだった

よく晴れた根津神社で、つつじが満開になる前の色の薄さを見ていた日。

架空の静かな庭園。赤い柵のそばで、まだ開ききっていないつつじのつぼみが春の光を受けている。
Voice Memo

「根津では、まだ咲く前の色がいちばん静かだった」の朗読。

根津神社へ行った。

つつじは、まだ全部咲いているわけではなかった。 でも、つぼみの色がきれいで、私は少しうれしかった。 咲く前の花は、まだ秘密を持っている感じがする。

境内は思ったより静かだった。 鳥居の赤も、曇り空の下だと少し落ち着いて見えた。 派手すぎない赤は、見ていて疲れない。

歩いている人たちは、咲いている場所を探していた。 私も探した。 でも、まだ咲いていないところを見る時間も悪くなかった。 待っている途中の景色は、完成していないぶん、少しやさしい。

帰りに少しだけ甘いものを買った。 歩きながら食べると、春の味というより、休憩の味がした。

満開ではなかったけど、行ってよかった。 満開の少し前を好きでいるのも、悪くないと思う。